歴史
日本頭蓋底外科学会創立の経緯
現在、頭蓋底外科と呼ばれる手術手技は、本邦でも、いくつかの施設で、1970年代から行われていた。1988年9月,L. Sekhar教授の主催で”Skull Base Symposium”という名の国際シンポジウムが3日間にわたり、開催された。当時は、頭蓋底外科という領域は認知されておらず、このシンポジウムに参加し、この分野の将来を予見した、本学会が研究会から学会に移行後の初代理事長で、当時、慶應義塾大学脳神経外科講師であった河瀬斌現慶應義塾大学名誉教授が中心となり、日本頭蓋底外科研究会の設立の準備が進められた。1989年1月7日には、設立準備会が開催され、東京大学脳神経外科高倉教授,大阪市立大学脳神経外科白馬助教授,愛媛大学耳鼻科柳原教授,慶應義塾大学脳神経外科戸谷教授、同耳鼻咽喉科神崎教授,同形成外科藤野教授ら十数人の設立委員が出席した。この準備会が,恙なく終了しようとしていた頃、すでに暗くなり始めた窓の外は異様な光景となった。地震でもないのに街全体が消灯し、漆黒の闇に包まれた。昭和天皇が崩御されたのである。翌日、昭和から平成へと元号が改まった。すなわちこの準備会の日が昭和64年の最後の日となり、1989年(平成元年)7月24日に東京青年館で開催された第1回日本頭蓋底外科研究会(後に学会となる)はまさに平成とともに歩む学会となったのである.翌年1990年にはNorth American Skull Base Society、1991年には日本の高倉教授が設立したAsian-Oceanian International Congress on Skull Base Surgery (AOSBS)、1992年にはWorld Federation of Skull Base Surgeonsが、それぞれの第1回の学術会議を開催、その後爆発的にこの分野は拡大していった事を考えると、日本の本学会はまさに世界に先駆けて設立され、AOSBSの事務局を支えてきたことは、この分野を先導してきたことが理解できる。