理事長挨拶

理事長 森田 明夫
日本医科大学 脳神経外科 大学院教授
日本頭蓋底外科学会は、平成元年、頭蓋底外科の学会としましては、世界に先駆けて設立されました。頭蓋の底には、大脳、脳幹、小脳の底面、目、鼻、口、顔、喉などを機能を司どる神経や、脳を養う血管、静脈など、とても重要な構造があります。そこに発生する腫瘍や血管障害、発生奇形や外傷など様々な疾患を扱う外科を頭蓋底外科と呼びます。脳神経外科、耳鼻咽喉科・頭頸部外科、形成外科、口腔外科などの多領域の外科診療科がそれぞれ単独または連携して治療に関与することが多く、本学会はそのような連携医療技術を、相互に切磋琢磨しかつ協力して向上することを目指して設立されたものです。本学会が設立された1980年代は解剖に基づき脳を圧迫しないように頭蓋底の骨を削除して病変にアプローチする技術が数多く開発されました。そのような技術は今でも応用されていますが、近年では顕微鏡に加えて内視鏡やビデオ顕微鏡などの機器が進歩し、必要最小限の骨削除で病変に到達し低侵襲でかつ安全な手術をする方法も確立されてきています。また画像技術の格段の進歩により正確に病変を捉え、また精細な3次元画像を用いて術前に手術プランをたて、手術リハーサルをすることも可能です。Roboticsも発達してきており、近い将来画像情報に基づいた頭蓋底Robot手術の展開も夢ではなくなってきております。それらの進歩に加えて多くの疾患では血管内治療や定位放射線治療、化学療法などの、非観血的治療またはこれらを手術を組み合わせての対応が可能となってきております。また頭蓋底外科という外科技術の上に根差した科学研究も進んでおり、あらたな病態の理解そして治療法の開発などが進められています。
本学会は今後も30年超の伝統に基づき、さらに新しい技術・科学の進歩を共有し、診療科間の連携を深め、より安全で精度の高い治療技術を普及するために貢献してゆきたいと思います。